在庫書籍紹介「南桂子 全版画作品集」
南桂子 全版画作品集
中央公論美術出版 平成9年
戦後日本を代表する銅板画家、南桂子。少女や鳥・樹木などを主な題材とし、城や塔などメルヘンなデザインを取り入れた、詩的な作品が特徴です。
素朴なタッチと淡い色遣いに、ある種独特な構図とライン使いが相まって、どこかアンニュイな雰囲気の漂うノスタルジーな作風は、日本国内だけでなく世界中の人々に愛されています。
明治44年、富山県産まれ。幼い頃に両親を亡くし親族に育てられましたが、その記憶は愛らしさの中にのぞくどこか寂しげな作風に現れているのかもしれません。
終戦後、30歳を越えてから油絵を学び、のちに夫となる浜口陽三との出会いが、銅版画の道へ進むきっかけとなりました。
1957年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)のクリスマスカードに「羊飼いの少女」が採用、1958年にはユニセフによるグリーティングカードに「平和の木」が採用。1964年にはユニセフの1966年版カレンダーに「子供と花束と犬」が採用されました。特に「平和の木」のグリーティングカードは評判が良く、200万枚以上が発行され、2度増刷されています。
浜口と共にパリ、サンフランシスコに暮らしながら製作に励み、遅まきながら技術の向上にも余念なく、生涯で多くの作品を残しました。
この全作品集は、南桂子版画作品の愛好者、研究者にとって最上の画集として愛蔵されるように編集が行われましたが、同時に版画家南桂子の全版画作品目録、カタログ・レゾンネの役割も果たすようにという意図もあるそうです。