在庫書籍紹介:絵入本源氏物語考
「絵入本源氏物語考 上・中・下 3冊揃 日本書誌学大系 源氏物語 53」
吉田幸一 青裳堂書店 1987年
「日本書誌学大系」は、青裳堂より1978年から刊行されている歴史あるシリーズ。現在でも刊行が続いており、110巻を超える大作シリーズとなっています。
その名の通り、日本の書誌学に関する叢書。
書物や文学、文献をひとつずつ取り上げて掘り下げた研究を行う、資料的な役割を大きく果たすシリーズです。
ご紹介する在庫は、その中から「絵入本源氏物語考」全3冊揃。
「絵入源氏物語」は慶安3(1650)年より、蒔絵師であり歌人の山本春正によって編集・刊行された書物。
源氏物語は平安時代以降、写本によって受け継がれており、読みづらさの面でも希少性の高さからも、一般市民にはなかなか読むことが難しいものでした。
「梗概書」と呼ばれる、簡易的に概要をたのしめる書物が出回っており、市政の人々はそれで親しんでいたよう。
そんな中、山本春正が自らの手による(とされている)挿絵を付け、より理解しやすい源氏物語を生み出しました。
場面の理解に役立つ、226の挿絵。また「源氏物語」本文に濁点・読点・振り仮名・傍注などが加えられており、他の書物を必要とせずに読みやすく「源氏物語」を理解できるように工夫されています。
この後刊行された絵入板本のほとんどは「絵入源氏物語」の挿絵に倣ったものであり、近代になって新しく刊行される版の挿絵にも用いられており、「源氏物語」史上きわめて重要な役割を果たしている書物と言えます。
そんな「絵入源氏物語」を深く研究できる「絵入本源氏物語考」。
理解を深めるために、ぜひいかがでしょうか。