空間・時間・物質、ほか文庫入荷
『空間・時間・物質』ベルマン・ワイル/著 内田龍雄/訳 2007年 ちくま学芸文庫 上下2冊
ヒルベルトを数学の父に、フッサールを哲学の母にもったワイルは、数学の詩人とも呼ばれる。その思索力と表現力において他の追随を許さなかった。彼の卓越した力量は、一般相対性理論によってドラスティックに変革された空間・時間・物質の関係をみごとに統一的に叙述する。理論生みの親アインシュタイン以上にその本質を描いたとも評された。本書は、その思考過程や縦横に展開された思索の深さを学ぶための最良のテキストである。翻訳は難解な原著をよく咀嚼し、懇切にその叙述が補われている。
『宇宙をかき乱すべきか ダイソン自伝』F・ダイソン/著 鎮目恭夫/訳 2006年 ちくま学芸文庫 上下2冊
相対性理論と量子力学を量子電気力学的に統合した数式「ダイソン方程式」を24歳で発表する。その後物質の安定性、相転移、重力理論等純粋物理研究の他、地球外知的文明、原子炉設計、核軍縮問題等広汎な分野で研究を続けている。科学のみならず、哲学、芸術、宗教等への深い造詣に裏打ちされた言葉は、科学・技術のあり方、ヒトという種の未来について叡智に満ち溢れており、宇宙論的視野に立ち、遠大な未来展望を与えてくれる。本書は、基礎的な科学教養書の名著である。